人知レズ

ひっそりと生きて行く。
ただ穏やかな日常があればいい。

同志

ある時彼に尋ねてみた


「セックスしたいと思わないの?」


「誰と?」


少し戸惑った

誰と?って

私以外を想定しているからこそ

出てくる質問返しだ


「質問を変えるよ。

誰とならセックスしたいの?」


「答えは君が想像する通りだよ。」


やはりそうだったか


彼もまた異性愛者ではなかった


私達は確認こそしなかったが

お互いわかっていたのだ


惹かれあったのではなく

引き寄せられたのだ


恋愛感情はなくとも

同志のような

そんな繋がりだった


私も彼も

肉体関係が伴わなければ

恋愛感情が生まれないことを

再認識した


私達は同種の人間だ


同性とのセックスを好み

異性も同性も好きにはなれるが

恋愛感情に乏しく

情が薄い



私は彼に告げずに

他の女と戯れる


恐らく彼も

どこかの男を抱いているのだろう

いや、抱かれているのか



今また私は

新しい扉を開きたい


それこそが

この拙い文章を書き記す

原動力なのだ

不感

「僕と付き合ってもらえませんか?」


「私は恋愛感情に乏しく、肉体関係には嫌悪を覚えるので無理ではないでしょうか?」


「貴女とセックスしたい訳ではありませんので。」


はっきりと

「貴女とセックスしたくない」

と言われた気がして

腹が立ったことを思い出す


男性の肉体には全く興味がなかったが

向こうに無関心を装われると

それもまたつまらない


「なら付き合ってみましょう」


簡単に返事をしてしまった


彼との会話は

いつも新鮮でバランスが取れていた

私が話したい時は

静かに頷きながら聞き役に徹してくれたし

珍しく彼が饒舌な時は

私が聞き役にまわる


肉体関係のない恋人同士は

食事と会話がすべてであった


私はその関係に満足しながらも

肉欲を満たす友達を探した


希望の友はすぐに見つかった


私と彼との関係を不可思議に思いつつも

私の願いは叶えてくれた


張りのある肌

引き締まった腹筋

長い指先

柔らかな舌


完璧であるはずの友は

性技に長けてはいたが

不感症だったのだ

「私の身体、好きにしていいよ」

そう言われ

口に含み

舌を這わせ

蜜が溢れるのを確かめたが

何も感じないらしい


私は喘ぎが聞きたかった

女の喘ぎに飢えていた


私はためらいもなく別の友を探した


またしても

すぐに見つかった


その人とは

一晩中絡んでいた

鎖骨の入れ墨に舌を這わせると

彼女より私が震えてしまった


そして彼女の喘ぎは

私が求めていたものだった

私の攻めに忠実に身体が反応し

遠慮がちに声をあげるのだ


攻守が逆転すれば

彼女は遠慮なく私を攻めた


果てしないと思われた行為も

朝日とともに睡魔に敗れてしまった



そんなふしだらな私が

私は好きなのだ

玩具

玩具への憧れを

性友に告げてみた


「私が気持ち良くしてあげるのに

何故オモチャが必要なの?」


違うのだ

私に使って欲しいのではなく

貴女に使いたいのだ


私の稚拙な行為では

貴女を頂上へは導けない


だから安易に玩具に頼りたかった


貴女の昇りつめる表情が

見たかったのだ


「一人の行為では

何回も昇りつめるのよ」


貴女は笑いながら私に言う


「わかなのせいじゃないの。

私は攻められたくないの。

私を攻めることが出来るのは

私だけ。」


私が彼女のどこに触れようと

彼女は私の手を払いのけたりはしなかった

でもその美しい表情を

歪ませることは

私には出来なかった



一度だけ

「私の前で自慰して」

とお願いした


「わかな、なんでも言うことを聞く?」


私はこみ上げる興奮を制しながら

「なんでも聞くから」

と言った



彼女ははじめてくれた



その彼女の美しさ

陶器のような両手を動かしながら

確実に自分を高めている




「私も隣でしていい?」


興奮を抑えられない私が漏らす


「いいよ。それが私の望みだから。」




自慰行為をはじめて人にみせた


彼女はじっと私を見つめながら

まだ両手を動かしていた


私を見つめながら

大きく果てたようだ

そして間髪入れず

私をより高みへと導いた



残念なことに

二度とその行為を

彼女と味わうことはなかった


本当かどうかわからないが

彼女の果てる顔を見たのは

その時の私だけだと言った


あの美しい表情が見られるのなら

私は今でも飛んでいきたい


あの時にはわからなかった

大事にしなければいけない恋愛なぞ


いや、はたして恋愛なのか

ただの欲望なのか



私の玩具への憧れは

次第に自分のために使うものとなり


今、私の横で

出番を待ち構えている