人知レズ

ひっそりと生きて行く。
ただ穏やかな日常があればいい。

発情

過去を回想する時


私は必ず濡れてしまう


恋人達との情事が

頭の中で暴れ出す



その滑らかな接触は

私自身が女であることの悦びの

すべてであると断言できる


私は男という性を

決して否定しない


ただその性は

私の欲望を満たせないだけだ


私は女性の滑らかな肌が好きなのだ


そして悦びの声を

絡め合う素晴らしさを知っている


今また私は濡れている


私は心の通わない営みも

ただ営みとして受け入れられる


それはファストフードに似ている


ただ欲を満たすだけだ


今の私はそれでいい


今はただ

欲を満たすだけでいい


滑らかな肌と

狂おしい喘ぎが聴けるなら

心なぞ通ってなくていい


私の発情なんてそんなものだ

濃人

貴女との恋愛を

なんと呼べば良いのだろう


ただただ

濃い時間を共に過ごしたのだ


私にしては珍しく

対等よりも従順が心地よく

まあそれも

長続きするわけもなく

それでも凝縮された

心地のよい

濃い時間を過ごしていた


時に激しく言い合いをし

無駄に傷付けあったこと

あれこそが

私の本来の姿なのであろう


飾った言葉と

耳触りの良いフレーズで

優しさのヴェールを纏っていても

貴女には通じなかった



貴女の

その激しい嫉妬心さえなければ

私達の濃い時間は

永遠に続いていたかもしれない


互いを束縛することに

なんの意味もない


私はただ

新しい体験を重ねたいのだ


あらゆる角度から

まだ私が新鮮であるうちにはそのような

熟した時期を迎えればまたそのような

日々変わり行く自分の変化に

私は逆らわない


永遠が輝きを伴わないのであれば

私は一瞬の煌めきを続けることを

なんのためらいもなく選ぶのだ


濃人よ

濃人だった人よ

貴女の幸せが

私の幸せであることに間違いはない

性友

あの人の指使いが好きだった

あの人の舌使いが好きだった


あれほどまでに私を叫ばす人に

今後私は出会えるのだろうか


私は満足だった


いそいそと会いに行き

そして全てをさらしていた


その舌使いを欲し

その指使いを欲し


どこまでも落ちていった


私はその性友によって

新しい快感の扉を開かれたのだ


そしてある日私は

唐突にそれを放棄した


今は

その快感を覚えた身体を

一人で慰める


あの舌を

あの指を


頭の中で動かしながら


私はただ果てるだけの行為に

没頭するのだ


私の背中を這う貴女の舌を

もう一度求める術など

「何もない」という現実に

ただ私は絶望と安堵を覚えるのだ